一首評〈第130回〉

心臓をまもって歩くけものたち(夏のいのちはいたみやすいね)
村上きわみ 『蟹座』「夏のこども」

(ネットプリント(net print)とは、富士ゼロックスがセブン-イレブン のマルチコピー機 向けに提 供しているサービス。インターネット経由で登録した文書ファイル (PDF, DocuWorks, Word, Excel, PowerPoint, JPEG, TIFF形式等)を全国の セブン-イレブン の富 士ゼロックス製マルチコピー機で印刷できる。第 三代機からメディア(CD-ROMやUSB)による ファイルプリントが出来るようになった。
現在は、スマートフォンの普及に伴い、AndroidとiOS(iPhone, iPad, iPod touch)向け に、netprint専用アプリケーション の提供も行っ ている。
安価で全国に届けることのできる利便性か ら、ZINEの配布媒体としても利用されている。(Wikipediaより))


 このところのマイブームはネットプリントである。
いろいろなものをプリントアウトしては、楽しませていただいている。
 そのなかでも、この夏私の心をつかんで離さなかった一首を紹介したい。

 今年の夏の暑さはいつになく厳しかった。
 死にそうに暑いなかをあるいていると、むしろ生きていることが不思議に思えてくる。生きていることと、死んでいることの違いは実はほんのちいさなことなのではないか、と感じる。
 真夏の暑さのなかで思考がぐったりしてしまうと、だんだん人間としての存在を保てなくなる。
 自分はほとんど肉塊に近いように感じられる。肉塊と自分との相違点は、命があるかどうか。命がある、それだけの理由で人間は腐らない。生物(いきもの)と生物(なまもの)の違いは生きているかどうかだ。
 獣のように、生を保っているだけで精一杯になる。ほんのすこしのことを間違えて、ほんの一歩を踏み違えて、肉塊になってしまわないように。命の源である心臓がいたんでしまわないように、まもりながら。戦うのではなく、じっと堪えて夏を生き延びようとする。
 このうたを読むと、そんな獣たちが街を這うように進む様が浮かぶ。

北村早紀 (2013年10月1日(火))